2015年6月22日月曜日

イケアにいけや(おまけ)

イケアに行った際、(駐車場内の)車を停めた住所を間違って覚えてしまった。他のイケアは知らないが、イケア立川店の駐車場は三階ある。すなわち、P1、P2、P3である。しかし、すっかり田舎人となった私は、昇降機や自動階段などさえ久しぶりにのるものであり、まして超大型店舗の駐車場などはめったに行かなくなっていたのである。

用心深い(が、おっちょこちょいな)私は、車を停めた住所A-4をしっかり頭に入れて売り場に降りた。目指す獲物は三点。主なものは、居間におく長椅子。心地よく本を読み、電気紙芝居を見、うたた寝をするためには必需品であった。が、長く予算がつかなかった。

予算の優先順位などは、独り者の私には、そのときの気分次第である。実用品が必ずしも順位が高いとは限らない。金がないのは事実ではあるが、かといって実生活で汲々として人生を過ごすのもつまらない。自分の心に言い訳をして、時々優先順位をひっくり返して趣味のモノを買う。矛盾するようだが、長椅子は、自分の中では必需品とは思っていたが、絶対のものではなかった。そして、決して安い買い物ではなかったので、予算的にはかなり以前より先送りの連続だったのだ。

長椅子購入が先送りされていた理由は他にもある。長椅子は、イケアのEKTORP三人がけと決めており、しかしながら店舗が近くになかったからである。最初は、貸し自動車を借り、高速道路を使ってゆくつもりだったので、長椅子の実質的値段は五割近くも上がる筈だった。

※ちなみに、私の知っているEKTORPとはストックホルムの東郊外にある地域の名前である。(昔、ここにあるジムに通っていた)

私の持っている箱型軽貨物自動車の荷室は、奥行きがせいぜい185洋寸(cm)であり、EKTORP三人がけは、入りきらない。とは先入観で、助手席の背もたれを後ろに倒せば200洋寸のものでも載る。運転中、左の後写鏡が見えなければ、道路交通法違反はいいが、実際上危険この上ない。しかし、それは問題なかったのである。これに気がついて私は、すぐ立川行きを決定した。

売り場で実物を目で見て、座って試してなどして、それから売り場の美人の担当者に私の懸案を話したところ、最悪自分で運べない事が判明しても、戻ってくれば配送の手続きをしてくれると言う。

半ば安心して他の二点を探しに行った。一点は一万五千円だかの、長椅子寝台(ソファベッド)。普段は二人がけの長椅子だが、座面を引き出すと二人用寝台になる。これを客間におこうと思っていた。しかし、実物は値段相応のものであったので、早々に諦めた。

残りは、肘掛け椅子である。まったくと言っていいほど、同じ意匠(デザイン)で同じ掛け心地で、値段が3,999円から30,990円の品揃えである。26,991円の差がどこにあるのかはわからない。私は加藤遊民(※金も教養もない遊び人の意。「改名について」参照)なので、PELLOと言う3,999円の方をとった。既にスコットランド滞在中に使ったことがあり、構造や意匠にひどく感銘を受けていたからである。(あるいはあれは、30,990円のPOANGだったか。いづれにせよ、外見、座り心地はまったくと言っていいほど変わらない)

私は、階下の倉庫に降りて、PELLOの梱包を台車に積んで支払い場所に向かった。あたりの景色は、スウェーデンのそれとほぼ同じである。天井がやたらと高い。米軍横田基地が近いので、外人が多い。

支払いを終え、昇降機に乗ったら米国人らしい太った子連れ奥様二人に遭遇した。彼女ら、階上から降りてきて、また上に行くらしい。展示場と倉庫を間違えたのだ。迷ったのですか?と聞くと、私のTシャツを指して、そこが私の来たところよ、と陽気に誤魔化された。私のTシャツは、欧州の慈善店で99セントだかで買った中古品で、SANFRANCISCOと書かれていた(自分で知らなかった^^;)。

彼女らをからかった直後に、私は自分の間抜けさに気がついた。あれ、私の駐車階はどこだっけ?その階の中の住所は覚えているが、階数そのものを覚えていなかった。動揺を悟られないように、当てずっぽうで、P2の釦を押した。

誰にでも「ついている日」というものがある。その日が、私のついている日だった。階数は当たり。私が押しているのが大きくて重い長椅子の台車で、階数が違っていたらちと面倒だったに違いない。昇降機を降りてA-4に向かう。

金にいとめをつけず、場所を選ばず、時間を気にせず探せば、それはいくらでもいいものは見つかるだろう。しかし、私の手の届く範囲でこんな座り心地のいい椅子はそうはないと、ひとりごちるのである。


        イケアのPELLO、3,999円 (橙色は、汚れよけの西洋手ぬぐいです)



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