2013年1月8日火曜日

冬の日常 6

3週間ほど前、私の留守中に知人がやって来た。帰宅して車から降りると、勝手口の把手に何やら合成樹脂の白い袋がぶら下がっているのが見えた。ああ、とうとう見かねてどなたかがお金でも置いていったか、などと思いながら中を覗くと、ラップに包まれた肉と紙片に書かれた伝言があった。

携帯電話を紛失し、訪問に際しての事前連絡ができなかった由であった。我が家は主人多忙につき、事前一ヶ月前には秘書を通じてその意図と時間を打ち合わせなければ面会は叶わない、と言うのが規則である・・・などということはない(断るまでもなく秘書などは存在せず、この離宮の主は私であるが、財政逼迫のおり、執事も家政婦も、庭師も運転手も本人が兼務している)。

普段肉はほとんど食べない。高いし料理が面倒だから、である。しかしながらせっかくいただいたイノシシの肉であるので、食べた。骨が残った。これで汁(スープ)をとって、などとは考えない。しかし、骨にまだ若干肉が残っている。久しぶりにテンにくれてやろうと思った。

その晩に私はイノシシの骨を裏庭の雪の上に放った。次の朝は異常なし。その晩ストーブに薪を追加しようと南のガラス戸を開けると、果たして骨が消えており、庭の明かりをつけてみるとそこいらじゅうに獣の足あとがあった。いつの間に来たものか、まだ宵のくちだったが。翌朝、雪上の足あとをよく見てみたが、何の足跡かさっぱりわからなかった。テンにしては大きすぎる。タヌキよりも大きいようだ。キツネだろうか、2つずつ並んで付いている。最近近くでキツネをよく見かける。しかし、素人にはわからない。

そして今朝のことである。庭のリョウブの樹間に置いた「野鳥食堂」が傾いて落ちそうになっていた。それは木に釘で固定したとかではなく、木と木の間に挟んだだけなので、風で木が揺れれば落ちたり傾いたりすることもありそうであった。が、昨晩は風など吹いていなかった。木の根元を見るとイノシシの骨を持っていった動物と同じ足跡がたくさん残っていた。これで足跡がキツネではないことがわかった。「野鳥食堂」は地上から1・9洋尺(1・9m)ほどの高さにあり、キツネに登れる枝ぶりでもない。

おそらくハクビシンであろう。「野鳥食堂」のお客の匂いをかいで木に登ったと思われる。足跡の大きさから見てテンではない。近々、以前にテンを誘った時のように(※)、イノシシの肉にテグスをつけて室内に引き込み、鈴をつけて犯人を待とうと思う。
※ 昨年1月16日に書いた 「冬の日常 2」 を御覧ください。

私は、傾いた「野鳥食堂」を立て直し(?)、中の小皿にはひまわりの種を置かず、手のひらに盛ってお客を待った。常連であるヤマガラ3羽ほどはすぐ来る。シジュウカラたちは非常に警戒心が強く、近くまでは来るが、けっして寄っては来ない。なんとコガラが初めて私の手に乗ってひまわりの種を啄んだ。彼らはみなスズメの親戚で、ほぼ同じ時間に群れて餌を食べに来る。ヤマガラが私の手から餌をとるのを見て、大丈夫とふんだものらしい。今のこの季節だからであろう、野に餌のあふれている夏には無理かもしれない。

この季節は関東で冬を越す東隣りのSさんが珍しく雪道をおして見えた。この近所で野鳥への餌やりは、Sさんが始めたものだが、私がヤマガラを手なずけたのに驚いてご自分も試したらしい。今では外にいると携帯で電話をしていても肩にとまってくると目をほそめられていた。

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