2015年5月15日金曜日

野鳥貸家 大変だー

昨日「野鳥貸家 2」を上梓(?)し終わってすぐのことであった。寝室の窓から貸家を眺めていたら、大きな蜂が飛んできてその玄関にとまった。

私は、ここ数日の間、近所でオオスズメバチを複数回目撃している。少し大袈裟に言えば、その大きさは私の親指に羽を付けたほど大きい。周囲を威嚇するかのように羽音を響かせて飛び回っている。獲物を探しているのか、また巣となる場所を物色しているのかは知らない。

昨年はキイロスズメバチが近くの舗装路にある四角いマンホールの穴に巣を作り、お隣のS氏が別荘の管理会社に連絡、ほどなく殺虫スプレーですべて退治された。一昨年はそのS邸の軒下に直径50洋寸(センチメーター)ほどの見事な巣を作り、近所を怖がらせた。(蜂たちが出て行った後に、昨年スズメが巣を作ったことは前回の「野鳥貸家 シジュウカラ先生、スズメ先生」に書いた)

件(くだん)のスズメバチは、貸家の玄関から中を覗いている。緊急事態ハッセイ。私は大急ぎで居間にあった双眼鏡を手に戻って、それを目にあてた。まだ中を覗いている。私は、早くシジュウカラの親が戻って来、この事態の回避されることを願った。心の中で、早く、早くと、もどかしく思っていたら、ついにスズメバチは貸家の中に入ってしまった。

生き物に獰猛なものなど無い。人食いザメだって、キングコブラだって獰猛なわけは無い。言葉と言うものは人間の発明なので、人間の都合で勝手に使う。ロットワイラーだって、コモドドラゴンだって凶暴なわけは無いのだ。動物界に例外はただ二種、人類とオオスズメバチである。我が野鳥貸家に押し入った暴漢は、オオスズメバチに違いない。

獰猛、残忍かつ凶暴凶悪なオオスズメバチの武器は、強力な毒針とあごらしい。孵化直後のシジュウカラの雛など、彼らから見れば、おいしそうなご馳走に違いない。雛はまだ羽毛もそろわず、動きもままならないはず。目も開かず、大きな黄色い口ばしで親鳥にエサをねだるだけの存在である。今なら大きさもスズメバチと大差ないだろう。私の脳裏には貸家の中の惨劇が浮かぶ。オオスズメバチは、無抵抗な雛に毒針を使う必要はない。いきなりあの強力な大あごで、雛を自分が巣に運べる大きさに噛み切るに違いない。

やきもきしている時の時間の長さと言うものは、それは長く感じる。実際それでも数分は経ったであろうか。一羽の親鳥がエサをくわえて帰ってきた。それがオスなのかメスなのかはわからない。胸前のネクタイの太いのがオス、細いのがメスだと言う。ただ、大家としては、ツガイがそろった時でなければ比較判別は難しい。ともかく一羽帰ってきた。玄関の前の枝にとまり、周囲を窺っている。これはいつもの行動である。私は、一秒も早く中に入って雛たちを救ってくれるよう願ったのだが。

数秒の後、親鳥がエサをくわえたまま玄関から中を覗いた。中の異常に気が付いたのだろう、すぐには入らない。やがて親鳥は玄関を離れ、近くの枝にとまった。エサはまだくちばしにある。それなりに考えている様子が窺える。

野鳥貸家の大家は考えた。あの狭い空間で、シジュウカラがオオスズメバチと戦って勝てるものだろうか・・・。大あごはともかく、オオスズメバチの毒針を受けたらシジュウカラは助からないだろうと思う。

長考の後、意を決して親鳥は巣の中に入っていった。中で何が起きているのかはまったくわからない。勝負は一瞬でつくのではないだろうか。もし、シジュウカラがハチとの戦いに慣れていて、毒針をうまくかわすことができれば、勝算は大きい。

ヤマガラが直接私の手からヒマワリのタネをもってゆくことは以前書いた。以来私は、時としてヒマワリのタネを掌中に隠してヤマガラを誘う。彼らはやってきて、私の手のひらを調べ、わずかに見えているヒマワリのタネを引っ張り出そうとする。これに失敗すると、タネを隠している私の指を突っつき始めるのだ。飛び上がるほど痛いわけではないが、それでもよく見てみると、ついばまれたところに小さく血が滲んでいるのだ。(下の動画をドウガ見てください^^;)

彼らの「つっつき」はそれほど強力である。シジュウカラもこの点は同じはずである。オオスズメバチといえども、毒針さえかわせれば、何ほどのことがあろうか。

数分の後、親鳥が玄関から出てきた。無事な親鳥を見て、私はほっとしたが、そのくちばしにオオスズメバチはない。確か、ハチは死んでも、しばらくは針の機能は生きていると聞いた。大丈夫なのだろうか。

今日も我が野鳥貸家の店子たちは元気に巣箱にエサを運んでいる。よかった・・・。


             数年前に撮ったオオスズメバチの死骸写真。私の人差し指と比較されたい。



                    おまけ・・・ヒマワリのタネを手のひらの中に隠し、ヤマガラに・・・。



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