2011年7月18日月曜日

めっちーとSnigal のでこぼこ道中

昔々、今の私たちの住む銀河ができる、ちょっと前くらいの昔、その近くの別の銀河に地球そっくりのある惑星があった。そこでも動物が進化を遂げて人間とそっくりの生物が出現し、やがて車を発明した。この物語は、それから100年ほどたった頃の話しである。

めっちーとSnigalとひでかすの3人は大きな大陸を挟んだ遠い国からこの島国に来て、たまたま知り合った。Snigalとひでかすは一軒の家を借りて一緒に住んでいた。同居人には他の国から来た人たちもいた。めっちーはひとりで都心の高級アパートに住んでいた。

ある時、めっちーとSnigalは車で島の反対側を旅してみようということになり、ひでかすを誘ったがひでかすはなまけもので一緒に行こうとはしなかった。めっちーとSnigalの二人は車で出かけた。小さな島ではあったが、島の反対側までは随分と時間がかかった。車はSnigalのもので四輪駆動車だった。車の前部には動物よけの大きなバンパーがついていた。彼はこの車が自慢だった。

彼らは島の真ん中辺りまで来たときに道の横に大きな水たまりを発見した。Snigalは水たまりに車を入れて四輪駆動の性能をためしてみたかった。彼はそれまで車を通勤に使うだけで、舗装道路以外を運転したことがなかった。水たまりはわずか15mほどの楕円形で、雨が溜まっただけのようだった。

Snigalは水たまりに3mほど車を乗り入れた。わずか10cmほどの深さで問題はないようだった。彼は俄然張り切り始めた。地球で言えば20世紀後半の日本で流行ったガンダムの操縦者になったような気になった。なんのこれしきの水たまり、グォーッ!

めっちーが止めるまもなく、車は深みにハマってしまった。前にも後ろにも進めない。アクセルを踏めばタイヤは泥をかき、ますます深く埋まっていった。Snigalはあきらめてめっちーと運転を交代した。めっちーはかつてジモニーという四輪駆動車を運転して荒野を駆けまわっていたことがあり、こういう状況には慣れていたからだ。

水溜りというのはどれも水面下の状況はわからない。いきなり深くなっているかも知れないし、ズーッと浅いままかも知れないし。浅く見えても泥が堆積してるだけで、入ると抜けられなくなったりする。Snigalはこの人生の哲理のような水溜りの状況をまるで理解していなかった。

めっちーは慎重にアクセルを踏み、タイヤが空回りしないようにつとめた。車はオートマチック車で、逆にこういう状況では操作が難しかった。いろいろ試みたが状況は好転せず、めっちーも諦めた。彼らには助けが必要だった。

めっちーはそこに来る途中で農家があるのを見ている。そこ行けば誰かが助けてくれる。めっちーは歩き始めた。幸い農家には人がいて、事情を話したらトラクターで駆けつけてくれると言う。が、トラクターは小さくて、何よりもオンボロだった。運転席の屋根も、エンジンのカバーもない、恐ろしく古い型のトラクターで、ふたつの大きな車輪だけが目立った。エンジンキーを回すとモーターが回り、エンジンがしぶしぶといったように回り始め、真っ黒な煙を吐き始めた。

Snigalはオンボロトラクターを見るやめっちーに一瞥をくれた。ソンナオンボロデ大丈夫デアルカ?しかし彼は人柄が良く出来ていたので、その不安を農夫には見せなかった。農夫は体が泥で汚れるのも厭わず、水の中に入っていって、Snigalの車にロープを結んだ。そしてオンボロの錆だらけのエンジンの後方にまたがった。後ろを見ながら慎重にアクセルを踏む。エンジンの回転がたいして上がらないうちにSnigalの車は動き始めた。

トラクターはタイヤこそ大きいが、車体はSnigalの車の半分ぐらいしかない。自らの足元がぬかっているにもかかわらず、あっさりとSnigalの四輪駆動車を水溜りから引き上げてしまった。めっちーとSnigalは農夫に駆け寄って仕切りと礼を言ったが、農夫は無口であった。田舎の人の素朴さか照れ屋なのか、ニコッと笑っただけであっさりと引き上げて行った。

旅は続いた。やがてめっちーとSnigalは島の西の果てに着き、そこから北へと向かった。左手は渺漠(びょうばく)たる大洋で、その果てにはデシャバール大帝国があった。彼らには行きたい場所があった。この島の出で、世界的な歌手となったエンヤコラと言う人の実家がパブをやっているというので、訪ねてみたかったのだ。エンヤコラはいなかった。パブのバーテンに聞くと彼女はお金が儲かったので今はこの国の首都ダボリンの郊外に暮らしているとのことだった。

エンヤコラをあきらめて二人はそこからわりと近くにある空港に向かった。Snigalとひでかすはヒコーキが大好きだった。めっちーもヒコーキが好きだった。しかし、その空港にはヒコーキはなかった。週に何回か旅客機が飛んで来るだけで、それ以外は何も飛ばないのだった。長く広い滑走路だけが退屈さのあまり、あくびでもしているように見えた。

退屈になってめっちーとSnigalのふたりは空港のフェンスに沿って車を走らせた。滑走路の端に来ると大きな建物が見え始めた。近づくとフェンスの内側に2台の消防自動車が停まっており、さらに建物の中に別にの一台があった。めっちーが車を降りて作業をしていた人に話しかける。どうやら消防士らしい。聞くとここはヒコーキがたまにしか来ないから出動はない、だけど消防車の整備はしておかないといけない、とのことだった。めっちーはもっともだと思った。そして、建物の中に入っているもう一台が気になった。それは丸みを帯びたモダンな形で、いままで見たことのない消防車だった。めっちーはフェンス越しに消防士に、あれは変わった形をしているね、と言うと消防士は我が意を得たりと言わんばかりに話し始めた。

残念なことにめっちーはその国の言葉がよく解らなかった。特に地方の訛りは解りづらいのだった。要約すると、あの消防車は最新式で、大陸にあるワシンダ国のものだという。めっちーが目を輝かせてフェンスにとりつき、さらにそれを見ようとしたら消防士が手を上げてちょっと待ってと言った。そして胸に付けている無線機で何かを早口で話した。するとどうだろう、建物の中にあった最新式の消防車が動き始め、こちらに向って来るではないか。運転席にいる消防士は笑いながらフェンスのそばにいる消防士と無線でなにやら話している。

四輪駆動車からはSnigalが出てきてめっちーに何事かと尋ねた。めっちーが経過を話すまもなく、最新式の消防車の屋根に着いている放水銃が動き始めた。消防車はいよいよちこちらの近くまで来て停まり、驚いたことに彼らの目の前で放水を始めた。目標は・・・・Snigalの四輪駆動車が狙われている。放水はフェンスを通して楽々四輪駆動車に到達した。その勢いはすざましく、すぐに車体が揺れ始めた。よく窓ガラスが割れないものだと思うほどの勢いと水量である。

めっちーとSnigalは小躍りして喜んだ。(総入れ歯、しばらく洗車してなかったなぁ。どうせなら車の反対側にも放水してくれればよかったのに・・・・)消防士たちも自慢気にニコニコしていた。彼らも遠~い東の国から来たヒマ人に一刻の無聊(ぶりょう)を慰められて幸せそうであった。

続く(かもしれない)

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